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「カビ対策」完全マニュアル

第1章 カビの正体とは?

1.1 微生物界におけるカビの位置づけ

カビは生物分類学上、真菌界に属する微生物です。
細菌やウイルスとは、系統的にも構造的にも本質的な違いがあります。

「微生物」という言葉は、主に大きさや肉眼で見えにくいことを基準とした便宜的な分類であり、
カビはその中でも真核細胞構造を有する比較的高度な微生物として位置づけられています。

このページでわかること
・カビがどんな生物なのか
・カビが生物分類の中で、どこに位置づけられているのか
・細菌やウイルスとカビは、何がどう違うのか

1. 真菌界におけるカビの分類的位置

真菌界にもいろんな種類があるんだね!

真菌界は、形態学的特徴および分子系統解析に基づいて、以下のように大別されています。

区分主な特徴代表例
酵母単細胞性、出芽・分裂による増殖サッカロマイセス属
カビ(糸状菌)多細胞性、菌糸を形成アスペルギルス属
キノコ類大型の子実体を形成シイタケ、マツタケ

このうち、カビは糸状菌に分類されます。
菌糸が集合して菌糸体を形成し、環境中に胞子を放出することで増殖・拡散します。

2. 微生物全体におけるカビの比較的位置

カビ(真菌)
カビは真菌に分類される生物です。細胞のつくりは真核細胞で、核膜をもつ核があります。自分自身で増殖することができ、主に胞子を形成することで数を増やします。パンや果物に生えるカビ、酵母なども真菌の仲間です。

細菌
細菌はカビと同じく生物ですが、細胞構造は原核細胞で、核膜をもたないという特徴があります。細菌は自立して増殖可能で、主に二分裂という方法で増殖します。身の回りや体内にも多く存在し、善玉菌・悪玉菌の両方があります。

ウイルス
ウイルスは生物ではない存在とされています。細胞構造をもたず、核膜もありません。自分だけでは増殖できず、宿主(人や動物、植物、細菌など)の細胞に依存して増殖します。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどが代表例です。

3. 細胞生物学的観点から見た特徴

カビの細胞壁は他と違うんだって

カビの細胞壁は、細菌とは異なり、キチンおよびβ-グルカンを主成分としています。
これは植物の細胞壁成分であるセルロースや、細菌のペプチドグリカンとも異なる特徴です。

生物群細胞壁主成分
カビキチン、β-グルカン
植物セルロース
細菌ペプチドグリカン

このような構造的な違いは、抗菌薬と抗真菌薬の作用機序の違いにも直結しています。

4. 生態学的機能と人間環境との関係

最近の高気密住宅では、カビが良く育つよ!

自然環境において、カビは分解者として機能しています。
セルロースやリグニンなどの難分解性有機物を分解し、物質循環を支える重要な役割を担っていますが、室内環境においては、次のような二面性があります。

観点正の側面負の側面
人間生活発酵食品、酵素生産アレルギー、真菌症
建築環境建材劣化、臭気
空気質胞子汚染、健康影響

特に現代の高気密住宅では、温度や湿度の条件がカビの生育に適しやすく、環境微生物としての管理対象として重要性が高まっています。


5. まとめ

本節では、微生物全体の中でカビがどのような生物であるのか、その位置づけについて解説しました。

カビは、細菌やウイルスとは異なり、真菌界に属する真核生物です。微生物と一括りにされることが多いものの、細胞構造や増殖様式、代謝の仕組みはまったく違います。

特に、菌糸を形成し、胞子によって拡散するという特徴は、カビが環境中に広く存在できる理由の一つです。また、自然環境においては分解者として重要な役割を担っていますが、室内環境ではアレルギーや建材劣化など、生活環境に悪影響を及ぼす存在でもあります。カビは人の暮らしと密接に関わる、二面性を持った微生物です。カビを正しく理解するためには、「汚れ」や「害」として捉えるだけでなく、生物としての特徴や生態を知ることが重要です。

理解度チェック

  • カビは真菌界に属し糸状菌に分類される
  • カビは真核細胞構造を有する比較的高度な微生物である
  • カビの細胞壁の主成分は、キチンおよびβ-グルカンである
  • カビは自然環境では分解者としての役割がある
  • カビの側面は建材劣化や健康影響である

次節ではカビの構造、種類、生育条件、そして対策を考えます。

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